『題名のない音楽会』と『アレクサンダー・テクニーク』

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◎安曇野吹奏楽団定期演奏会
先日、安曇野市豊科ホールで4年ぶりに開催された安曇野吹奏楽団の定期演奏会に行ってきました。

安曇野吹奏楽団は、安曇野市を拠点にイベントでの演奏や保育園などへの訪問演奏を中心に活動しています。

演奏会では、幅広い年齢層を対象に演奏曲が組み込まれ、久しぶりに生の演奏を聞くことができました。

ほんとうに楽しそうに指揮をしている指揮者の姿を見ているうちに、ふと思い出したことがありました。

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◎『題名のない音楽会』での質問
かなり昔になりますが『題名のない音楽会』という音楽番組の公開録画に、会場の視聴者の1人として参加したことがありました。

その折に、今後の番組で視聴者の質問に応えるという企画があり、私の書いた質問が番組で採用されることになったという手紙が後日自宅に届き、お礼に腕時計が同封されてありました。

ところがです。質問を書いてから時間が経っていたことや公開録画の短い休憩時間にいくつもの質問内容を思いつくまま箇条書きで書きなぐったため、どんな内容を書いたのかまったく覚えていません。

音符は読めない。有名な音楽家の名前と顔は一致しない。古典音楽の長い曲名は覚えられない。楽器の名前も見分け方も使い方もよく分からない。こんな音楽にうとい私が、いったい音楽番組でどんな質問をしたのだろうかと。ちょっと不安な気持ちに襲われました。

そして迎えた放送当日。
いくつかの視聴者の質問に応える形で番組は進んでいきます。
司会者が次の質問者の職業と年齢と性別を言ったことで、次は私の番なのだということが分かったのです。
私の質問は
「指揮者が乗る台の高さを変えるとどうなるのですか?」というものでした。

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番組では指揮者の台が演奏するうちにだんだんと上に上がっていき、舞台の上の方まで上がり続けたのですが、まったく指揮者は高さに関係なく楽しそうにタクト(指揮棒)を振り続けているように見えました。

一方、演奏家たちは、台の高さに合わせて指揮者の姿を追いながら目線を上げて苦笑しながら演奏をする姿が映し出され、会場からは笑いが起こっていました。それで私の質問コーナーはあっけなく終了。

私の質問は映像としてみれば誰が見ても分かりやすかったのだと思います。
当時はただぼーっとテレビ画面を見ていただけですが、後になって疑問に思ったことがあります。

「では指揮者の台の高さを変えることで何か変わったことはあったのだろうか?」と。
そのきっかけになったのが1冊の本と出会いです。

◎『アレクサンダーテクニーク』について
『音楽家ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと  アレクサンダー・テクニークとボディ・マッピング』という本は書店の音楽関連のコーナーではなく、リハビリ関連の棚で見つけた書籍です。

この本は、身体の解剖イラストが書かれていて医学書のような難しい専門用語はほとんど出てきません。

著者のバーバラ・コナブルさんは教師であると同時に詩人でもあり、感覚的な独特な表現をされます。そのため日本語に翻訳した場合に、日本語としてはしっくりこなくて内容がなかなか頭に入ってこないのです。

ただ音楽家にとって自分の体の動きを知ることはとても大事なことであることは伝わってきました。

その後、初めて知ったこの『アレクサンダーテクニーク』という聞きなれないことばにひかれて調べてみたことがあります。

『アレクサンダーテクニーク』は、19世紀にオーストラリア人の俳優F・Mアレクサンダーが考えた呼吸、発声、姿勢の方法論です。

たとえばヨガや体操、太極拳、自彊術は、ある決まった形を習って体を動かして体を整えていく方法です。

一方『アレクサンダーテクニーク』は、まず自分の体と向き合い、自分の体の癖を知ることから始めて、無駄のない体の使い方を身につけて体を整えていくという考え方なのです。

自分の体を使って決まった形を習うのはそれはそれで難しいのですが、まず最初に自分の姿勢や動作と向き合わなければならないため、人によっては自分を再教育するこの方法に難しさを感じて途中で挫折してしまう人も少なくないようなのです。

一方では演奏家や演劇人、歌手といったアーティストからは支持され、特に演奏家からは最高の活動を引き出すための演奏法として、世界的に支持されている技法で関連書籍が多く出版されています。

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さて、『アレクサンダー・テクニーク』という方法のことを知ってからあの『題名のない音楽会』ことを考えてみました。

指揮者の台の高さを変えることで何が変わったかというと、当たり前のように思うかもしれませんが、それは演奏家の姿勢が変わったことです。

小さなテレビ画面を見ていただけなので、指揮者の姿勢の変化まではよく分かりませんでした。
しかし、演奏家の方々はあきらかに体を後ろにそらした姿勢で指揮者の姿を追って頭をあげていたので、楽器を抱えている人の腕は上に上がらざるを得なかったと思うのです。

つまり体のバランスがいつもより短い時間ではあっても一時的に崩れて演奏していたことになります。
姿勢が変わったことで呼吸や力の入れ方にも変化があったと考えられます。

ただそれが演奏曲として変化につながったかどうかといえば素人の私には分かりません。
演奏家や指揮者にはなにかしらの変化を感じたのであれば、演奏にも変化があったと想像するだけです。

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今までお話してきたこの『アレクサンダーテクニーク』の技法はなにもアーティストのためだけの方法ではありません。
実は日常生活や職場で肩こりや腰痛など不調を抱えている人にも有効な改善方法として期待ができます。

そんな不調を抱える人に手軽に読める本として『世界一ラクな身体の使い方ですべてが叶う』(サブタイトルは『姿勢・動作・呼吸・発声が劇的に良くなる「アレクサンダー・テクニーク」』)がオススメです。

この本では、ラクな体の使い方は「力を抜くこと」。
そしてそのコツは「ふぅーとため息をつくこと」だと簡潔に分かりやすく書かれてあります。

もしご興味のある方はご参考になさってください。

◎お灸教室情報
10月15日に「秋の養生を実践して冬に備える」をテーマに当院でお灸教室を開催します。
詳細は次回にご案内致します。