[建国記念の日」に寄せて~葉室賴昭氏の『にほんよいくに』
昨日は全国的に雪が降った1日でした。
安曇野市でも朝から一日中雪が降り続き、積もった雪で昨日は雪かきに追われていました。
さて2月11日の今日は「建国記念の日」。
昔は「紀元節」(きげんせつ)と呼ばれていました。
「紀元節」は、『古事記』や『日本書紀』で日本の初代天皇とされる神武天皇の即位日をもって定めた祝日です。
1873年(明治6年)に定められ、1948年(昭和23年)の占領軍(GHQ)の移行で廃止。
1966年(昭和41年)に「建国記念の日」として国民の祝日となりました。
皆様はこの「紀元節」には歌があることをご存じですか。明治26年文部省の唱歌として戦前の小学校で歌われていたのだそうです。
以前勤めていた介護施設で、高齢者の方の中でこの「紀元節」の歌を今でも覚えていて口ずさむことができる方がいらっしゃいました。
小さなころに覚えた歌は、年齢を重ねていても自然と口ずさむことができる方が多いですね。
一度聞いただけでは内容が難しくて私には覚えられず、簡単に口ずさむには少し難しい曲ではありますが、とても美しい曲です。
ご興味のある方はこちらからお聞きください。
「建国記念の日」といわれても、それまで日本という国がどうしてできたのか、私はあまり興味を持っていませんでした。
それは、戦後の教育で育った私は、日本のことについて、戦前に教えられた教育がどちらかといえば否定され、生まれた国にもかかわらず、どこか外国より劣った国であるかのように教え込まれた部分があったことが大きな要因だったのではないかとこの頃思うのです。
ところが、最近日本という自分が生まれた国の歴史や文化について、あまりにも無知であることに遅まきながら気づき、もっと自分が生まれた日本という国の歴史や文化を知りたいと思うようになりました。
そのきっかけになったのが春日大社の元宮司の故葉室賴昭氏の『<神道>のこころ』(春秋社)という本です。
葉室氏の半生がインタビュー形式でまとめられた1冊です。
この本を手に取ったのはタイトルに惹かれたというよりも、本を開いて目次の項目に目がいって購入したというのがほんとうのところです。
目次の第二章の『東洋医学のふしぎ』に鍼治療やつぼの話という項目が載っていたからです。
葉室賴昭氏は宮司になる前は形成外科の医師でした。
形成外科とは、「生まれながらの異常や、病気や怪我などによってできた身体表面がよくない状態になったのを改善する(治療する)外科で、頭や顔面を含めたからだ全体を治療対象としています」(公益法人日本整形外科学会のHPより抜粋)。
葉室医師は、赤ちゃんの手術をすることが多く、あるきっかけで、手術を必要とする疳(かん)の虫のある赤ちゃんに鍼灸師が鍼をすると、夜泣きをしないだけでなく、傷の治りや経過がよいことに気がつきます。
それから数年間、葉室医師は自分の体で鍼を体験したのち、手術をした患者さんに手術後すぐに鍼をして、退院するまでの毎日鍼をしたのでした。
するとどうでしょう。患者さんの血行が良くなり、腫れや傷の治りに非常に良い影響を与え、術後の吐き気や腰痛の訴えがなくなったのだそうです。
すると、あまりの効果があるため一般の患者さんも鍼を希望され、その後は医者なりの鍼灸治療を行うようになります。
そこで、その劇的な効果を学会で発表したところ、東洋医学などほとんど知られていなかったので、「医者のくせに」というので、同じ医師からものすごく軽蔑されたのだそうです。
葉室医師は、もし明治政府が、西洋医学だけでなく東洋医学も医学として認めていたなら、今の日本にはすごい日本医学があっただろうと言っておられます。
この葉室医師は、その後医者として40年を過ごしたのち、藤原家の末裔にあたる公家の出身であることもあり、通信教育を経て宮司の道へと進み、春日大社の宮司となります。
「神道」は宗教と思いがちですが、葉室氏は「神道」とは宗教ではなく、古くからの日本人の生き方であり、生活習慣だという考え方をしています。
葉室氏は多くの書籍を残しています。その著作の中で子どもにも大人にもオススメしたい本が『にほんよいくに』(冨山房インターナショナル)です。
「日本民族が、世界でも珍しい素晴らしい人生観で生きてきた民族で、祖先はそれをずっと伝えてきました。子どもたちに日本人のすばらしい伝統を伝えたい」という思いで、この『にほんよいくに』を書いた動機を語っています。
日本の歴史と伝統に培われた生きるための知恵「いのち」を伝えていきたいという葉室氏の温かなメッセージがつづられています。
子ども向けに書いた文章の後に「おうちの方へ」と同じ内容を大人向けに少し詳しく書かれています。
しかも子どもにも大人にも平易な言葉でやさしく書かれているのに、それでいて深い意味のこもった内容に感銘を受けずにはいられません。
そして、なにより声に出して何回でも読みたくなるような美しい言葉でつづられています。
読後は心が洗われるような気持ちになります。
そして、日本人に生まれてきたことをごく自然に感謝したくなりました。
素晴らしい日本の国のことをどう将来に伝えていくかを考えさせてくれる貴重な書籍だと思います。
「建国記念の日」にぜひおすすめしたい1冊です。
お灸教室開催は3月19日に開催予定です。