お灸教室開催と映画『土を喰らう十二カ月』

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松本の「新村地区福祉ひろば」での『3ケ月連続講座 お灸を学ぶ』(9月~11月)と「庄内地区福祉ひろば」での『二カ月連続講座 ひろば健康講座』(10月~11月)が先週終了しました。

福祉ひろばのスタッフの方々の温かな対応や細やかな気配りに感謝をするとともに、今後も、皆さまにお灸のセルフケアのよさを少しでも伝えていける機会があればよいと考えています。

参加していただいた方々の感想はこちらからご覧いただけます。okyuukouza

さて、今週の日曜日に『土を喰らう十二カ月』という映画を久しぶりに映画館で鑑賞してきました。

この映画は、作家の水上勉氏のエッセイを原案に、脚本・監督の中江裕司さんが、1年半に及ぶ撮影を経て完成させた作品です。

主演は沢田研二さん。料理の監修を料理研究家の土井善晴さんが担当しています。

この映画は長野県北安曇郡白馬村で撮影されました。

監督は長野で撮ることと雪があることを条件にロケ地を探していく中で、白馬の廃村で、雪深い茅葺(かやぶき)屋根の家にたどり着きます。

そこで北アルプスを望む白馬の風景を見た時、主人公の人物像がしっかり肉付けができる場所だと考えてここをロケ地に決めたのだそうです。

「映画にはすべて本物を使いたい」という監督のこだわりで、ツトムという主人公の住む家を建て、その家の前に畑を作って実際に苗を植え、収穫された取り立て野菜を調理していただく過程を丁寧に描いています。

この日は上映後、中江監督の舞台挨拶があって信州での撮影時やスタッフ・キャストの秘話などを披露してくれました。

その時ちょっと驚いたことは、監督が「ジュリー(沢田研二)のファンの方?」と尋ねると満席だった館内でかなりの方が手を上げられたことでした。

私はファンではないけれど、実際に沢田さんが料理をしている佇まいはとても美しく素敵だなと感じました。

この映画には、『十二ヶ月』とタイトルが入ってはいますが、それをさらに二十四節気(にじゅうしせっき)に分けて描かれています。

二十四節気とは中国発祥の暦で春夏秋冬を六つに分けたものです。
一節気は約15日間でそれぞれの季節にふさわしい名前がついています。

映画では節気での美しい風景が映し出されています。

この映画の原案となったのが水上勉氏のエッセイ『土を喰らう日々 わが精進十二カ月』です。

この本は、著者が少年のころ、京都の禅寺に預けられ、そこで和尚から精進料理の作り方を教えられた体験をもとに、晩年は軽井沢に住み、畑で育てた季節の野菜を収穫して料理を作る日々を月ごとに綴った生活料理本なのです。

私がこの本を始めて読んだのは20代。『雁の寺』をきっかけに『越前竹人形』や『五番町夕霧桜』、『飢餓海峡』などの水上作品をたて続けに読んだ時期がありました。

その後、書店でこの本をはじめて見つけたときは、その不思議なタイトルにとても惹かれて手に取ったことをよく覚えています。

「土を喰らう? それってどういう意味なんだろう」と不思議に思ったからです。「土を喰らふ」ということは「旬のものを食べること」だと水上氏は説明しています。

「その土地で獲れたものを食べ、生活するのがよいという「身土不二(しんどふじ)」という言葉を知ったのもこの本がきっかけでした。

そして、この映画の料理監修は土井善晴さん。私は土井さんが提唱する『一汁一菜』の考え方を知ってから、この半年ほど味噌汁の具を工夫するようになり食生活を見直しするようになりました。

季節にそってあるものを食べるのが自然と共存してきた日本古来の人間の暮らしだと土井さんはいいます。

そのため、この映画では獲れたての野菜を料理して作るのは1回だけ。一発勝負で撮影された季節の料理はほんとうにおいしそうにスクリーンに映し出されています。

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自然な恵みを収穫し、それを料理する主人公の1年間をスクリーンをとおして体感できるとてもぜいたくで味わい深い映画になっています。