『江戸の快眠法』と貝原益軒

先日、東京の紀伊国屋書店で平積みされた『江戸の快眠法』という本に目が留まりました。
著者は宮下宗三氏です。

鍼灸学校を卒業してすぐの頃です。
私は、新医協東京支部鍼灸部会という団体の鍼灸講座を受講しました。
その時、同じ講座を受けていたのが宮下氏です。彼はその後中国に留学。帰国後、開業されて鍼灸学校や新医協の講師をされています。

本の内容ですが、サブタイトルに「東洋医学で眠れるからだを作る」とあるように、東洋医学の知恵を生かしての養生法です。
家庭でだれにでも簡単に実践できそうなことをとても平易な言葉で簡潔に書かれています。

この本の中に貝原益軒(かいばらえきけん)のことが書かれています。
300年間続く超ロングセラーの健康本『養生訓』の著者です。

彼は、85歳まで長生きして、自からも養生法を実践していました。
そこまでは知っていましたが、それ以上詳しいことは、この本を読むまで知りませんでした。
益軒は、生まれつき病弱で、健康に問題を常に抱えていました。
いつ体調を崩し、どういった治療を行っていたかを克明に書き残しています。
かぜ、頭痛、下痢、めまい、痔などに頻繁に苦しんでいました。
今日はお灸を何個したとか、鍼治療をしてもらったとか、詳細に記録していたようです。
とても益軒が身近な存在に感じられます。

しかし、ここからが彼のすごいところです。
60歳以降に数十冊の本を執筆しているのです。
『養生訓』は83歳のときに書かれています。
病弱ではあった益軒は、病に伏せていたわけではありません。
養生をしながらも旅行もよくして、多くの紀行文も書いていたとか。

「自分の体の弱さに対処しながら、結果的に健康な人より健康に生きた貝原益軒」。
生涯ほぼ現役で生き抜いた益軒を紹介しながら、宮下氏はこう書き綴っています。
「不可能である病気や老いを克服しようとするのではなく、病気になっても軽めの状態で乗り切って、再び立ち上がる技術を身に着けていきましょう」と。
『養生』のたいせつさを改めて考えさせてくれる1冊です。