韃靼(だったん)そば茶と神田のそば屋
当院では来院された方で、そばアレルギーのない方に、韃靼(だったん)そば茶をお出ししています。
韃靼そば茶には、化学肥料や農薬を使用していない信州安曇野産を使用しています。
安曇野は、北アルプスの山麓が広がり、標高が700メートル前後と涼しく、降水量が少ないためにそばの栽培に適しています。
この韃靼そば茶。独特の香りと味わいがあり、残った実も食べることができます。中国では普通のそば茶を「甘そば」、韃靼そばのことを「苦そば」というのだそうです。
韃靼とは、モンゴルに住んでいるタタール人のこと。この民族が古くから「苦そば」を栽培していました。それで日本ではこの「苦そば」を韃靼そばと呼ぶようになったそうです。
韃靼そばの実には、からだによい成分が多く含まれています。
ポリフェノールの一種であるルチンは、普通の日本そばの120倍ほど含まれています。
ルチンは、毛細血管をじょうぶにしたり、弾力性がなくなったり、破れやすくなった血管を修復します。
そして、血液の流れを改善したり、血圧を下げる効果があるといわれています。高血圧、動脈硬化、糖尿病の予防によいのです。
ビタミンB群、亜鉛、カリウム、マグネシウムなど10種類以上のミネラルが含まれています。
カフェインがまったく含まれていないので、寝る前に飲んでもだいじょうぶ。
眠れなくなるということもありません。
妊娠されている方や赤ちゃんが飲んでも問題がないようです。
抗酸化作用もあり、中性脂肪の高い方や体重コントロールをしたい方にも効果的な作用をもたらしてくれそうです。
そして、さらに女性にとってはとてもうれしい効果があります。美容・美肌効果。
シス・ウンベル酸という舌を噛みそうな名前の成分が、シミやそばかすの原因であるメラニン生成を抑えてくれるようです。
飲み方です。小さじ2杯くらいを急須に入れて熱いお湯を注ぐだけ。
出し切ったお茶の後に、残った実も有効成分があるのでいっしょに食べるのがいいようです。
ちょっと、そばつながりの話になりますが、先日東京に出かけたときのことです。
新宿から地下鉄でセミナー会場のある神田に降り立ちました。
予定時間より少し早く着いたので、会場場所の周辺を散策することにしました。
ふと向かい側の大道りを隔てた高いビルとビルの間に、古い店らしき建物がぽつんと目に入ってきました。
何の店だろうと思い、近くにある歩道橋を渡って、その建物に向かっていきました。
そして、その店の前までくると「まつや」とかかれた看板が—。
「まつや」。神田にある老舗のそば屋です。
ここは作家池波正太郎氏がこよなく愛したお店なのです。
数十年前のこと。秋葉原の電気街の帰り道に、このお店を友人と訪ねたことがあります。
池波氏の随筆に出てくる「まつや」のおそばを一度でいいから食べたいと思ったからです。
お店はとてもこじんまりとしていたという印象が残っています。
遠い昔のことで、神田のどこにあるかなんてまったく覚えていませんでした。
それが思いがけずに再会することができて、ほんとうに懐かしい思いがありました。
この日、残念ながらお店はお休み。
もう一度、あの店内でおそばを味わうことはできませんでした。
でも、戦災を免れた古きおそば屋の雰囲気が今も残る建物。それをながめているだけで、昔の思い出が蘇ってきて心豊かな気持ちになれたひと時でした。